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翻訳者の編集力

昨夜、社内翻訳者のポール牧野氏がツイッターでUstream中継をしているのを拝聴しました。その中で、これからは翻訳者の編集能力がより求められる可能性があるという話があり、その点に注目してみました。

この編集というのは、クライアントが翻訳の成果物に対して、どこまでの品質や作業レベルを求めているのかということがポイントになると思います。

私は翻訳というものの本質的な意味を考えた場合、翻訳者に編集能力が求められるのはむしろ当然のことだと思います。

翻訳というのは、単に原文の内容を機械的に別の言語に置き換える作業ではなく、各案件の条件を考慮し、原文の論理の流れを追いながら、原文に書かれた内容を別の言語で表現する異文化間の言語技術です。その時、例えば、日本語の文章で重複する内容が複数の段落にわたって書かれているようなことがあります。そういった内容を英語に訳す場合には、意図的に重複を避けて、同じ内容を一つの段落にまとめてしまった方が、論旨が明確になって、より英語らしい文章に仕上げることができます。(英日でも、文脈や文書によって同じようなケースが見られることがあります。)

私は、東京のある語学専門機関の翻訳者養成コースで行政分野の日英翻訳を学んだ経験(基礎科と本科合わせて約4年)があるのですが、その授業の中で、ネイティブ講師が説明してくれた翻訳というものの本質を考えると、翻訳の作業内容の中には、本質的には編集も含まれていると思います。

つまり、翻訳力の中には、原文の解釈能力や外国語の運用能力、内容の編集能力、リサーチ能力といった様々な要素が含まれており、そういうものを全て包括した概念が翻訳力だと思うのです。

今私が書いたことは、翻訳の本質的な理論です。ただ、実際の翻訳実務では、必ずしも常にそういう作業が求められているわけではありません。私はこのことを、翻訳者養成コースで学んだ後、実際の実務に関わるようになってから、実感として感じるようになりました。

どういうことかと言うと、翻訳者養成コースで学んでいた当時、Wordの脚注機能を使って、訳者註を付記するという方法論を覚えたのですが、実際の実務ではあまり使うことがないという印象を持つようになりました。

つまり、原文の論理の流れや内容を考えた上で、意図的に重複する記述箇所を一つにまとめて表現したり、場合によっては、段落を入れ替えたりする方が文章の流れがスムーズになり、より読みやすく自然な文章になるということがあります。そういう場合、理論的には訳者註を付けて、翻訳者がどういう判断で編集を行ったかを明記しておくという方法を使うことができますが、私が実務を経験していく中で感じたのは、そういうことを直接求められる機会は少ないということです。

クライアントの中には、原文の形式や書き方、表記スタイルに手を加えることなく、忠実に訳してほしいということを求めてくるケースがあります。そういう場合、翻訳作業に当たる現場の翻訳者にとっては、その意向に沿って作業を進めることが基本になります。

本当は、ここはこういうふうに少しだけ加工した方がいいのではと感じるような箇所があっても、あまり余計な手を加えてほしくないというクライアントの意向がある場合、極力そういうことはすべきでないということになります。

私は翻訳者養成コースで学んだ後の実務を通じて、そういう部分で認識を新たにしました。

とは言うものの、時と場合によって、使い分けています。

例えば、以前ある経済関連の学術文書を英語に訳していた時、同じ文脈に全く同じといってもいいような記述が二つ続けて書かれていることがありました。ほんの少しだけ表現を変えてありますが、同じ内容をわざわざ二回続けて記述していました。

私はこの箇所を英訳する時には、Wordの脚注機能を使って、訳者註を付記し、重複内容を一つにまとめて訳した旨を明記しました。翻訳会社に提出する際にも、その旨を伝え、クライアントに確認しておいてほしいということを伝えました。

その後、これに関して何も問題はありませんでしたし、これまでも様々な状況に適宜ケース・バイ・ケースで対応しています。

そんなふうに、個々の案件上で直接求められているかどうかに関係なく、私は経験的に編集作業(小幅の)を時と場合によって使い分けています。

以上は、あくまでも私の翻訳に関する経験に基づいたものであり、全く違うアプローチを取っていたり、全く違う考え方を持っていたりする翻訳者や通訳者の方もおられるだろうと思います。

最近、もう一つのブログで偶然この編集という作業について書いていたので、昨日の牧野さんの話は、私にとって絶妙のタイミングという感じでした。

テーマ : 翻訳
ジャンル : ビジネス

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プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

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curiositykh@world.odn.ne.jp

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