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北アフリカ・中東情勢と石油市場

今回は、1月のチュニジアでの政変をきっかけとして、エジプト、リビア、バーレーンへと広がっていった一連の民主化運動について書いてみました。

エジプトのムバラクやリビアのカダフィといったら、アフリカで長期間にわたって独裁体制を築き、君臨してきた人物であり、その体制が崩れたり、揺らいだりする事態が今年になって起こるというのは、本当に驚きです。

きっかけは失業中のチュニジアの若者が街頭で野菜や果物を売っていたところを警察に止められ、荷車を没収され、さらに暴力を振るわれたことに対して、焼身自殺を図ったことでした。

これに対する国民的な不満や怒りが燃え上がり、デモや暴動へと発展し、ベンアリ政権崩壊にまで至りました。この動きがエジプトの人たちのムバラク体制に対する不満にも火を付け、エジプトでも大規模な民主化要求デモが起こり、ムバラク大統領の辞任という結果に至りました。

さらには、それがリビアや中東のバーレーンにも飛び火し、リビアでは今でも反政府勢力とガダフィの大規模な武力衝突が続いている状況です。

リビアのカダフィと言えば、反米の権化とも言うべき人物であり、リビアを40年以上にわたって統治してきた独裁者の代表のような存在だと思います。

そのリビアにまで反政府運動が広がるというのは、ジャスミン革命の影響力は凄まじいものがあると感じずにはいられません。特に、今はインターネットが高度に発達し、世界中でリアルタイムの情報発信ができる時代なので、そこで得られた情報が他国の人たちの感情を突き動かすスピードは、格段に上がっているのでしょう。

私は今回の一連の動きを見ていると、マルクスの歴史観を思い出します。つまり、マルクスは、歴史を動かしていく大きな流れは、最初は人間の力によって生み出されるけれども、いったん流れができると、それは巨大なうねりとなって、いつの間にか人間の力では簡単には止められないものになる、と言っていたと本で読んだことがあります。

今回のブログを書くにあたり、北アフリカと中東の情勢が石油市場に及ぼす影響について、関連記事を調べてみました。

まずは、英国王立国際問題研究所の上級研究員、ポール・スティーブンス氏の記事の内容を以下にまとめてみました。

チュニジアで抗議デモが始まって以来、1月4日の1バレル94.90ドルから2月下旬には過去2年半の最高値である1バレル120ドルにまで原油価格(ブレント原油)が上昇した。

石油の供給自体に今のところ影響が出ていないのにもかかわらず、このような価格の高騰が見られた。スエズ運河と紅海・地中海を結ぶSUMEDパイプラインの石油輸送を巡って懸念があったが、このルートが分断されることはなく、実質的な輸送量自体も少ない。

ここでポイントになるのは、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)とロンドンのインターコンチネンタル取引所(ICE)の動向である。アラブ世界は全て同じであると考えている原油先物ディーラーたちは、チュニジアとエジプトで今日起こったことが、明日ペルシア湾の産油国にも大きな影響を与えると考えている。この見方は、バーレーン情勢によってさらに強くなったが、バーレーンは国家的な分裂が起こりにくい他の湾岸協力会議加盟国とは違うのである。

しかし、原油市場ではなく石油供給において、北アフリカおよび中東地域は世界の石油市場に極めて重要な役割を果たしている。この地域は世界の石油埋蔵量の61パーセントを占め、国際的に取引される原油の40パーセントを輸出している。リビア(日量144万バレル輸出)とイエメン(日量12万5000バレル輸出)の石油輸送が途絶した場合、世界市場に影響が出る。既に、世界の多くの石油企業がリビアでの石油生産をストップさせている。

また、イランで騒乱が起こる兆候もある。アフマディネジャド体制に対する不満から反乱が起きる可能性があり、既に石油企業の労働者のストライキが起こっている。

さらに、欧州は北アフリカのガス供給に大きく依存している。EU15はガス消費の16パーセントを中東および北アフリカからの輸入に頼っており、そのうちスペインは55パーセント、イタリアは43パーセントである。

国際エネルギー機関(IEA)は在庫の搬出の可能性を示唆しているが、これまでの歴史的な経緯から、市場の混乱を抑えるよりも、むしろ不安定な価格変動を助長する可能性の方が高いと言える。

短期的な石油供給と価格への影響は、「アラブの春」の結果と、原油先物取引市場がその結果にどう反応するかにかかっているが、同地域の新たな石油供給への投資に関しては、長期的に見て深刻な疑念が生じる。もし、将来石油需要が満たされる可能性があるとしたら、中東および北アフリカの石油埋蔵量を増やすために莫大な投資が必要になる。この大部分は世界の石油企業が担う必要があるが、政治的な不確定性をかかえた状況の中では、そうした投資は難しいだろう。つまり、価格に重大な影響を及ぼす石油供給の危機が差し迫っているのだ。


石油問題に関して、元外務省国際情報局主任分析官である佐藤優氏は、「【リビア緊迫】漁夫の利狙う産油大国ロシア」と題する記事の中で、興味深いことを書いています。

ロシアは情勢を極めて冷静に見ながら、自国に有利な状況をつくろうと戦略的に動いている様子がうかがえます。記事の中から、以下のポイントを抽出してみました。

ロシアは中東情勢の混乱に付け込んで、国益の極大化を図っている。チュニジアとエジプトの騒乱までは、ロシアも基本的に欧米と歩調を合わせていた。しかし、騒乱がリビア、バーレーン、イエメンに拡大すると顕著に独自路線をとるようになった。

ロシアは現在、中東諸国で生じている事態について民主的改革ではなく騒乱に過ぎないという基本認識を示した上で、事態を傍観するという国家意思を示しているのだ。

中東の騒乱にはロシアにとってプラスとマイナスの両面がある。マイナス面はイスラム原理主義過激派が伸長し、その影響がチェチェンをはじめとする北カフカス地域に及ぶことだ。プラス面はリビア、バーレーンなどの産油国の情勢が不安定になり、原油価格が上昇することだ。

チュニジア、エジプトの騒乱までは、ロシアにとってプラスよりもマイナスの方が大きかった。それだからロシアも欧米と協調姿勢をとった。しかし、リビア、バーレーンなどの産油国、さらに大産油国サウジと国境を接するイエメンに騒乱が拡大するに至り、原油価格の大幅な上昇が期待されるようになったので、プラスがマイナスを凌駕した。ロシアは本音では、現状はロシアの国益を増進すると考え、傍観する姿勢に転じたと筆者は見ている。

中東情勢は北方領土交渉にも影響を与える。ロシアの国章が双頭の鷲であることに象徴されるが、ロシアは東と西を同時ににらみながら国策を練る。中東情勢の不安定化により原油価格が上昇すると、日本は化石燃料大国であるロシアに依存することになると予測しているのであろう。それだから北方領土交渉で強気になっているのだ。

ロシアは、中東の混乱を自国の利益のために最大限に利用しようとする帝国主義政策をとっている。日本が「油乞い外交」でロシア帝国主義のわなにからめられないようにする国家戦略を早急に構築する必要がある。


また、このブログサイトに紹介されているカダフィと北朝鮮の関係に関する佐藤優氏の情報も興味深いものです。

佐藤氏によれば、北朝鮮の主要輸出品の一つはいまやトンネル掘りであり、シリアやレバノン、少し前はリビアなども顧客だったという。トンネルというのは避難壕や地下施設なども含むもので、カダフィは家族を北朝鮮製のトンネルにかくまっていた。

カダフィ自身も北朝鮮製のトンネルを有事のために備え反米を叫んでいたが、ブッシュ政権の後半で国際原子力機関(IAEA)による核査察を受け入れ、突然アメリカの軍門に屈服した。それには次のような経緯があった。

ブッシュ政権の後半に、イギリスがアメリカの仲介としてカダフィに接近した。そのときにカダフィがかくまっていた家族の居場所や顔写真なども全て暴き出した。そしてIAEAの核査察を受け入れ、核を作ろうとしていたことを公に謝罪すれば、今までのことは全て水に流すと交渉した。


佐藤氏は著書の中で、世界で諜報や謀略に最も長けているのが英国だと言っていますが、このカダフィ懐柔にも英国のしたたかさやうまさが出ていると思います。

今回のチュニジア、エジプトの政権崩壊に端を発した一連の動きは、歴史的に大きなものであることは間違いないと思います。約30年にわたってエジプトの長期政権を築いてきたムバラクの辞任、40年以上にわたってリビアに君臨してきたカダフィ体制に対する大規模な反政府抗議運動という出来事からは、時間の重みを感じます。

ただ、私は、このようなアフリカの国々よりも少なくとも発達していて、経済成長も経験してきた日本で、2009年まで50年以上にわたって自民党政権が続いていたという事実の方が、なんとも皮肉に感じられます。あの選挙は革命に匹敵する出来事だったのか。

テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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共通点と相違点

北アフリカや中東情勢と日本の自民党政治が敗れた選挙との共通点は悪政に国民が抵抗したこと。
相違点は、前者は単純な爆発現象に見え、後者は亜流が出てきて本当に国民の不満を吸収していない点だ。

前者の中にはっきりとした方向を示せる政治部隊があれば本当の革命になるであろう。後者は中途半端で失敗し、振り子が戻ることもありうる。自民の50年がだめで、民主も亜流でダメだと国民はまだ気づいていない。日本は強い反共シフトがあり、本当の革命にいたるのはまだまだ時間がかかる。

Re: No title

> murou55さんへ
>
> コメント、ありがとうございます。
>
> >共通点は悪政に国民が抵抗したこと。相違点は、前者は単純な爆発現象に見え、後者は亜流が出てきて本当に国民の不満を吸収していない点。
>
> 基本的に、その通りだと思います。ただ、中東や北アフリカの情勢が単純な爆発現象に終わるかどうかは別にして、それまで何十年間も続いてきた政権が打倒されたという事実は大きいと思います。
>
> >前者の中にはっきりとした方向を示せる政治部隊があれば本当の革命になるであろう。
>
> 今回の不満の爆発的な力が実質的な変革につながるかどうかは、そういうコアとなる勢力が全体の流れを結集して、はっきりとしたベクトルを示すことができるかどうかという点は、ポイントになると思います。
>
> ただ、中東地域といっても、単純にひと括りにできるわけでもなく、各国や各グループの利害がぶつかったり、考え方の違いによって力が分散したりするところが、結果を左右するだろうという感じがします。
>
> >後者は中途半端で失敗し、振り子が戻ることもありうる。自民の50年がだめで、民主も亜流でダメだと国民はまだ気づいていない。
>
> いや、国民は2009年の選挙にかけた期待は既に過去のものとなり、民主党の政治にもうんざりしている部分があると思います。ダメだと気づいていないことはないと思います。あの選挙では、国民はそれまでの自民党の政治に"No"の意思表示を突きつけ、いったん民主党に政権を任せて、どんな働きができるか試してみようという消去法を選択したのだと思います。が、今では、それからの民主党のやり方に対する不満や失望が広がり、ダメだということはわかっていますよ。では、誰に、またどの政党に期待できるかと考えると、正直なところ、信頼できると感じている政治家や政党が見つからないというのが本音ではないかと思います。
プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

ブログを読んでいただいて、ご意見・ご感想などございましたら、お気軽に以下のアドレスまでメールをいただければと思います。

curiositykh@world.odn.ne.jp

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