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物語型マーケティング

私は、世の中で活躍している著名人や、ビジネスの現場で販売されている商品やサービスの裏にある物語に非常に興味があります。

以前ブログに書いたように、F1ドライバーの故アイルトン・セナに興味を持つようになったきっかけも、セナに関する本を読んだことでした。

これは、私の好みや考え方が即物的でないことを表しているのだと思います。

商品の裏にある物語で、特に代表的な例として真っ先に思い浮かぶのがフェラーリです。

フェラーリは1947年の創業以来、一貫してF1に参戦し続けており、その間に何人もの一流ドライバーが亡くなっています。テストドライバーも亡くなっていますし、創業者エンツォ・フェラーリの長男、アルフレッド・フェラーリも病いで早世しています。

そのボディカラーから、「フェラーリの赤は血の赤である」というある種の死を想起させる高貴な血の匂いが漂っており、その世界観のどこかに、名状しがたい危うさや、人間の持つ儚さのようなものを感じさせるのは、フェラーリをおいて他に存在しません。

あたかも闘牛に興奮する観衆のように、人はある種の恍惚感を持ってフェラーリを見ます。その物語性、伝説性、神話性が、フェラーリの比類なきブランドの根幹を形作っていると言えます。

『ハリー・ポッター』シリーズの大ヒットの要因にも、作品そのものの魅力はもちろんですが、その裏にある秘話にもインパクトがあったように思います。

翻訳者の松岡佑子さんの旦那さんは静山社という出版社を経営していましたが、病気で亡くなるという悲劇に見舞われ、松岡さん自身がその経営を引き継ぐことになりました。

ある時、仕事で英国を訪れ、現地で『ハリー・ポッター』という作品が人気を博していることを知り、実際に読んでみると、その魅力に惹かれ、松岡さんは著者であるJ.K.ローリングに英語で手紙を書き、日本語訳を自分に担当させてほしいということ、日本語版の版権を静山社がほしいということを要請した、ということを描いたテレビ番組を見たことがあります。

私の好きな本の中の一冊に、ジャーナリストの立花隆さん『青春漂流』という本があります。

これは単行本として出版されたのが1985年というかなり古い本ですが、ナイフ職人や動物カメラマンなど、様々な背景を持った11人の20代から30代の人たちへのインタビューをまとめたものです。

その中には、今や有名なソムリエである田崎真也さん(1995年に第8回世界最優秀ソムリエコンクール優勝)の25歳の頃の様子も記述されています。

この本の中では、インタビューを受けた11人のそれまでの人生や目指すビジョンなどが語られていて、各自の波乱万丈の人生物語を楽しむことができます。

私が先月仕事で翻訳依頼を受けた案件の中に、特に物語性が濃いものがありました。

それは、英字新聞『ジャパン・タイムズ』に掲載された“Battling a broken system”と“Behind the facade of family law”と題する記事を実際に書いたネイティブ寄稿者からの依頼で、その記事を和訳するというものでした。(記事の最後に書かれているように、執筆者名のRichard Coryはペンネームです。)

内容は、国際結婚し離婚した米国人の父親と日本人の母親が子供3人の監護権をめぐって裁判を起こし、家庭裁判所が父親が娘を引き取ることを認めたというものです。(息子2人の監護権は母親に認められました。)

この母親は、不倫をしていた上に、子供を虐待していたそうです。記事を読むと、児童相談所や福祉事務所の杜撰で事なかれ主義的な対応がよくわかります。また、外国人に不利な社会的雰囲気も伝わってきました。

母親は自分ではなく夫が虐待をしているとウソをついたり、福祉事務所はその話を詳しく調査することもなく、ほんの30分の話し合いだけで簡単に信じて、母親と子供を保護施設に入居させたりするという現実が綴られています。

訳文は、離婚夫婦による連帯保護義務(joint custody)に関する活動をしているNPOに提供されるそうです。

この案件では、自分が仕事を通して、クライアントに、また社会に貢献することができているという実感が特に強く感じられました。

記事そのものが案件の全てを物語っており、翻訳を通じて、自分が物語の一部に参加することができているという身近な感覚を味わうことができました。

翻訳や通訳という仕事は、言語で表現されたある種の物語(広義の情報)を伝達する橋渡し役であり、その物語の内容や微妙なニュアンスが出来るだけ正確に伝わるようにするプロセスをデザインすることが役割です。

だから、私は自分のブログのページタイトルに「コミュニケーション・デザイナー」という言葉を使っています。

私自身も、異文化間コミュニケーションをサポートする仕事を通じて、クライアントや社会に対して心を打つような物語を一つでも描くことができればいいと思っています。

テーマ : 成功をかなえる自分に向かって
ジャンル : ビジネス

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プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

ブログを読んでいただいて、ご意見・ご感想などございましたら、お気軽に以下のアドレスまでメールをいただければと思います。

curiositykh@world.odn.ne.jp

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