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わが永遠のヒーロー アイルトン・セナ

今回は、私が影響を受けた人物について書きたいと思います。

私は、自分が関わっている英語や翻訳の世界だけでなく、いろいろな世界に生きる人たちの影響を受けてきましたが、その中でも特に大きな衝撃を受けた人物としてF1ドライバーの故アイルトン・セナを挙げることができます。

私はもともと、車好きでもなければ、モータースポーツに興味があるわけでもなく、アイルトン・セナについても名前だけは知っている有名なレーサーというくらいの認識しか持っていませんでした。

F1と言っても、マシンがスピンしてコースを外れたら、ドライバーがあっけなくレースから姿を消すといったイメージしか持っておらず、F1の何が面白いのか全くわからないタイプの人間でした。

ところが、これはもう1990年代の話になりますが、ある時、『わが友 アイルトン・セナ』という本を読んだのがきっかけでセナに興味を持つようになり、F1の世界に魅力を感じるようになりました。

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この本は、元ホンダF1チームの総監督を務めた桜井淑敏さんという人が書いた本で、セナと公私にわたって長年交流してきた経験について綴ったものです。

この本を通じて、私は、極限のスピード、ミリの世界、1000分の1秒の世界に生きた“音速の貴公子” アイルトン・セナの超人的としか言いようのない孤高の生き方に、何とも言えない魅力を感じました。

セナはまさに、至上の高みを追い求める走る神だと思いました。

同著の中の記述で、1987年のシーズン・オフに桜井さんが、当時ホンダでチームメイト同士だったセナとアラン・プロストを栃木にあるホンダの施設に案内し、新車の走行テスト・コースを訪れた時の話は、私にとって驚愕の内容でした。

その当時、発売を直前に控えたプレリュード4WS(4輪操舵)がテスト・ランしているところでした。

パイロンを立てたミニ・コースを造り、テスト・ランしているところで、コースと言っても、自動車教習所のクランクをうんと狭くして、連続させたようなものです。

そこをプレリュードで走ろうとすると、時速10キロくらいのスピードでも物理的に回り切れません。どうしてもパイロンを倒してしまいますが、4WSだと小回りが利くので回れる、というように設計してあるミニ・コースです。

教習所に行ったことのある人ならわかると思いますが、クランクというのは一度でもハンドルを切り損ったら絶対に通り抜けられないように設計されています。このミニ・コースの場合、4WSの車でようやく通れるくらいコース幅をぎりぎりに狭めてあるから、一度でもミスしたら、絶対に取り戻すことは不可能です。

桜井さんたちがこのミニ・コースを通りかかった時、セナとプロストは立ち止まって興味深そうにその光景を見つめ、セナが、
「サクライ、あれは何をしているの?」と尋ねたそうです。

桜井さんがプレリュードの4WSの走行テストをしているところだと答えると、「面白そうじゃないか。ちょっと乗せてくれよ」と言いました。

セナは、ゆっくりと、だが確実に通り抜け、パイロンは微動だにしません。何度も走っているテスト・ドライバーと同じくらいのスピードでコースをクリアして戻ってきました。

すると、今度は猛然とアクセルをふかし、急加速し、アッ、と叫ぶ間もないうちに、4WSは時速40キロくらいのスピードで、パイロンの中に突っ込んでいったそうです。

その場面の記述を以下に引用します。

  プレリュードは、信じられない速度で次々とコーナーを抜けていく。リア・タイヤを激しくドリフトさせ、パイロンのわずか数センチ手前でピタリと止める。テスト・ドライバーでさえ、人が歩くくらいのスピードでしか走れないのに、40キロのスピードを保ったまま、コースを走り抜けてしまった。
  私たちは、声も出せずに顔を見合わせた。とても人間技とは思えない。こんなことがあり得るのだろうか。

(中略)

  だが、一番驚いていたのは、テスト・ドライバーたちであった。普通の人から比べれば段違いに運転のうまい彼らが、F1ドライバーの凄まじい力量を目の当たりにして、腰を抜かさんばかりに驚いていた。

私はこの記述を読んだ時、F1ドライバーの想像を絶するようなドライビング・テクニックを思い知らされた感じがしました。

私自身、学生時代に自動車教習所で運転を習い免許を取得した経験があったので、クランクを通る教習も受けたことがあり、その狭さはよく知っていました。

そこをセナは、時速40キロのスピードで駆け抜けていったというのだから、それはもう素人の想像をはるかに超える世界の話です。

また、路面の繊細な変化やマシンのデリケートな挙動を的確に察知し、状況を正確に感じ取るセナの飛び抜けたセンシング能力に関する桜井氏の次のような記述も、私にとって大きな驚きでした。

  セナは、かつて私にこんな話をしたことがある。
「一度走ったことがあったり、テストしたことのあるサーキットの場合、ドライビングの才能はあまり問われなくなる。つまり、テクニックや経験、ノウハウといったことでカバーする部分が多くなるからね。だけど、まだ一度も走っていないコースに出たときは、ドライバーの潜在的な能力や、エンジニアの手腕がストレートに試されることになる。新しい状況に対するさまざまな判断の的確さと、決断の早さが勝負になる。それは才能とも言えるものだ」
「理想的なのは、グランプリの開催されるサーキットでのテストを一切やらないことだと思う。そして、金曜、土曜でプラクティスをして、日曜はレースする。そうすれば二日間という限られた時間の中で、さまざまなコンディションを把握し、それに対して最善の策を尽くして調整することになる。そうすれば、真の能力が試されることになり、勝利を求める情熱や決意の固さが、自ずと現われてくるだろう」
  できるだけ、テストをしないほうがいいなどと主張するドライバーを、私は他に知らない。なるべくコースに慣れておいてレースに臨みたいと考えるのは、F1ドライバーとて同じである。その点、セナはまったく他と隔絶している。こうした彼の発言を支えているのも、その異常なまでのセンシング能力の高さだと言えるだろう。

そのセナも、1994年5月1日、サンマリノグランプリのイモラサーキットタンブレロコーナーでコンクリート壁に激突するという事故で、帰らぬ人となりました。

セナは、総獲得ポイント数(614で史上3位)や優勝回数(41で史上3位)、ポールポジション獲得数(65で史上2位)といったその驚くべきレース成績だけでなく、レーサー、人間としてのドラマチックな生き方で多くのファンやドライバーたちに影響を与えました。

ミハエル・シューマッハ佐藤琢磨フェリペ・マッサなど多くのドライバーに影響を与えた偉人だと思います。

前記の著書のプロローグで、桜井淑敏氏は次のように書いています。

「キミは、スーパースターをどう定義する」
セナはしばらく黙っていた。
「僕がF1界のスーパースターかどうか、それは僕には分からない。いや、他人がそう呼んでも、僕には関係ないことなんだ」
彼が今歩くのは、前人未到の道である。
“完璧”という、かつて人類が誰一人到達したことのない目標に向かって走り続ける。それは自らを神の域に高めようとする、虚しい作業なのかもしれない。
その姿を見て、人々はどう思うのか。
「昔、キミは嫌われていた」
「そう。僕が何をしても嫌われた」
「今、キミは人々に仰ぎ見られる存在だ」
「そうだろうか。実感はないけどね」
人々はセナの足跡を追う。彼の後には人の群れができる。彼に従うことによって、人々はまた、高みを味わうことができるのだ。
「いつまで走り続けるんだろう」
「僕が自分のパフォーマンスに納得してしまったときだろうね。そのときから、僕の進歩は止まってしまうということだから」

私は、セナはイモラの最期まで、決して自分のパフォーマンスに満足しなかったのだろうと思います。

テーマ : 生き方
ジャンル : ライフ

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懐かしかった

ツイッターでもフォローさせて頂いてます者です。
私も、自分の中のヒーローはセナだと感じており、
桜井さんとは一緒に仕事(雑誌連載)も仕事をしたこともあり、
セナは、サーキットのピットで挨拶だけしたことがあり、
彼が亡くなってから、ブラジルのお墓参りをしたことがあり、
・・・・・・・
いろいろなこと、思い出し、
すべてが懐かしく、
すべてが胸を熱くする感じを
楽しみながら、読ませて頂きました。

joewatanabe

No title

JOE渡辺さんへ

コメントありがとうございます。

桜井さんといっしょに仕事をしたことがある方からコメントをいただけるとは、たいへん嬉しく思います。サーキットでセナにあいさつしたことがあるというのも、羨ましいです。
プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

ブログを読んでいただいて、ご意見・ご感想などございましたら、お気軽に以下のアドレスまでメールをいただければと思います。

curiositykh@world.odn.ne.jp

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