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翻訳プロセス全体を通じたコミュニケーション

翻訳とは、改めて言うまでもないことですが、ある言語で書かれた文書を別の言語へと変換する異文化間コミュニケーションの一形態です。

翻訳において、実際の翻訳作業自体が重要なのは言うまでもありません。つまり、翻訳者が的確な訳語を選択することができるか、綿密なリサーチを行っているかといった要素は、最終的な訳文の質を大きく左右するものです。

しかし、私は翻訳においてもう一つ重要なプロセスがあると考えています。それは、翻訳を進めていく上で、翻訳会社やクライアントといかに密なコミュニケーションを図ることができるかということです。

翻訳は異文化間コミュニケーションの一形態だと前述しましたが、翻訳作業を進めていくプロセスそのものも、コミュニケーションの一種だと言えると思います。

翻訳の実際の案件には様々なものがあり、各案件によって微妙に留意事項が違うものです。納期はもちろんですが、文字数やワード数、クライアントの指定する特定の条件といったものが異なります。

例えば、クライアントがあらかじめ用意した用語集がある場合、指定された訳語を使うことが基本となります。また、文書の形式に関しても、何か特定の指定がある場合、それに従う必要があります。

実際に翻訳作業を進めていると、詳しく調べてもはっきりしない事柄に直面することもありますし、文書の内容の中にわかりにくい記述(書いた本人に聞かないとわからないような内容など)を見つけ、翻訳会社やクライアントに確認する必要が出てくるような場合もあります。そのようなときには、普通メールや電話といった手段を使って、不明な事項を確認します。(納期が短くて確認する時間が取れないような場合もときにありますが、私はそのような場合には、納品の際、メールや電話でその旨を率直に伝えます。)

このようなプロセスは最終的な訳文を仕上げる上で非常に重要なものだ、と私は考えています。

確認しなければ正確な内容がつかめない記述を、自分の恣意的な解釈によって訳すのは、職業倫理的に不誠実なやり方だと思います。少なくとも、これまでの私の経験上、入念に確認したことに対して、翻訳会社やクライアントからマイナスの評価を受けたことはありませんし、毎回丁寧な対応をして頂いています。

私の場合、普段は翻訳会社を通して仕事をさせて頂いていますが、エンドクライアントから直接の依頼を受けることもあります。例えば、先月ある経済学者の方から経済論文の和訳の依頼を受けました。

この案件では、あらかじめ学者さん本人から用語集の提供を受けており、そこに挙げられた指定の訳語に従って訳す必要がありました。

が、翻訳を進めながらその用語集を見ていると、書き間違いと思われる記述が一ヶ所見受けられ、念のために確認しておいた方がいいと思われる用語がいくつかあったりしました。そこで、この方に電話で連絡を取り、これらの点について確認してみました。(事前にメールでも情報交換はしていました。)

私が電話をしたその日、偶然ですが、この学者の方の身内で不幸があり、お通夜やお葬式の準備で忙しい状況でした。

全くそんな状況だと知らなかったとはいうものの、そんなときに電話をかけてしまい、たいへん失礼なことをしてしまったと思いましたが、この学者さんは非常に誠実な対応をしてくださり、その場で私の確認したい事項について良心的でわかりやすい説明をしてくださいました。そして、また何か聞きたいことがあったら遠慮なく気軽に電話して下さいと仰ってくださいました。

私はこの方とお仕事させていただいた経験を通じて、クライアントとの人間的な交流がいかにお互いにとって有益なものかを改めて感じました。

直接コミュニケーションを取ることによって、相手も要望を的確に伝えることができますし、翻訳する側も相手のニーズや考えていることをできる限り正確に汲み取ることができます。そのコミュニケーションを通じて、お互いに安心感を得ることができ、結果的により良い成果物を提供することができます。

翻訳作業とは決して紙の上のものではなく、依頼を通じてエンドクライアントと対話することだと思います。その対話を通じて、お互いが信頼関係を構築していくことになります。相互の信頼関係とは、マーケティング的に言えば、顧客のマインドシェアを獲得するということであり、これは翻訳者のポジショニングやブランディングにつながります。

どんなビジネスも人間同士のコミュニケーションで成り立っていますが、言葉によるコミュニケーションを扱う翻訳や通訳という分野こそ、まさに仕事のプロセス全体を通じたコミュニケーション能力が試されているのだと思います。

もしクライアントの満足のいく成果物を提供することができなかったとしたら、単に翻訳作業そのものに問題があったということだけではなく、その案件に付随する翻訳会社やクライアントとのコミュニケーションにも何か問題がなかったかどうか検証してみることが必要だと思います。

テーマ : マーケティング
ジャンル : ビジネス

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プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

ブログを読んでいただいて、ご意見・ご感想などございましたら、お気軽に以下のアドレスまでメールをいただければと思います。

curiositykh@world.odn.ne.jp

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