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選挙とソーシャルメディア

英誌『エコノミスト』4月24日号に“The shock of the old”と題するイギリス総選挙関連の記事が掲載されています。

記事は選挙へのインターネット利用についてであり、内容をまとめると以下のようになります。

今回の総選挙ではメールやブログ、SNS、Twitterといったネット上の新しいソーシャルメディアの活用が大きな影響力を持つことになるだろうという事前の予想に反して、4月15日に行われた第一回目の3党首のテレビ討論会放送後に第三極として注目される自由民主党の支持率が10ポイント上昇した。これは従来型のメディアの勝利を表している。

候補者は有権者との関係を築くための新しいメディアを有効に活用できていない。政治的なメッセージを広く発信するには、新しいメディアよりも従来のメディアの方が適している。最初のテレビ討論の視聴者は940万人で、ゴールデンタイムの視聴率は37%だった。テレビこそは、一日のうちに多くの人たちにメッセージを届けることができるメディアであり、新聞も依然として多くの読者数を維持している。それに対して、最近話題のTwitter利用者は限られた範囲に過ぎず、全体の中では目立たない存在だ。

インターネットと違って、テレビや新聞は高い年齢層の人たちのメディアという側面が強い。一回目のテレビ討論の視聴者の47%が55歳以上であり、『デイリーメイル』紙の読者の36%、『デイリーテレグラフ』紙の読者の41%が65歳以上である。高い年齢層の人たちは若い有権者よりも投票率が高いため、候補者たちにとっては彼らこそ重要な存在である。有権者への訴求力という点では、依然として従来型のメディアが優勢である。

201017brc342.gif
年齢別の平日の平均テレビ視聴時間の比較(百万人単位)
(55歳から64歳、65歳以上の年齢層が16歳から24歳を圧倒している)


『ソーシャルメディアマーケティング』(オガワカズヒロ著)の中で、大企業のマーケティングにはテレビや新聞、ラジオ、雑誌といった従来のメディアを使ったマスマーケティングが向いているのに対して、中小企業やベンチャーのマーケティングには新しいソーシャルメディアが適していると指摘されています。ソーシャルメディアは、密着軸を基本として顧客との長期的な関係を築いていくのに適したメディアであり、既に一定のブランドを確立している大企業の場合、短期的に不特定多数の人たちにメッセージを送ることができる従来型のメディアの方が向いているといいます。これは選挙や政治活動に対するネット利用にも当てはまるようです。

日本でも、近年インターネット選挙は頻繁に議論のテーマとなっており、「不特定多数への文書図画の頒布」を禁じた公職選挙法の改正が検討されています。実際、奇しくも今回イギリスで第一回目のテレビ討論が行われた4月15日付で産経新聞に「民主党がネット選挙解禁法案を提出方針 今夏の参院選から適用へ」と題するオンライン記事が掲載されました。記事には、「民主党がまとめた法案の素案によると、選挙期間中は禁止されていたHP、ブログ、ツイッター、電子メールの利用を原則解禁する。ウェブ上で街頭演説の動画を配信したり、候補者が日々の動きをブログ、ツイッターで更新することも認める」と書かれています。

『エコノミスト』の記事の内容は、これからの日本における選挙へのインターネット利用を考える上で、重要な判断材料になると思います。現在、ウェブ媒体が高度に発達し、Web2.0と呼ばれる新たな段階に突入しています。Yahoo! JAPANが昨年行った「第25回インターネット利用者アンケート」によると、ウェブ利用者を年齢別に調査すると34歳以下が減少傾向にあり、35歳以上が増加の傾向という結果が出ています。ただ、55歳以上の年齢層の人たちの利用率は、絶対的に低いものであり、デジタル・デバイドは依然として大きい状況にあると思います。これは、上記の『エコノミスト』の記事に記述されている、一回目のテレビ討論の視聴者の47%が55歳以上だったという結果と符合します。逆に言うと、若い世代のウェブ利用と高齢世代の従来型メディア利用という棲み分けが続いている状況です。

少なくともこのような結果から判断すると、少子高齢化が進む中で選挙におけるインターネット利用の効果を促進する上では、55歳以上の人たちのウェブ利用を促すことと、若い世代の投票率を上げることが重要な要素となります。

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2009年10月13日から10月26日までの14日間のアンケート期間中、パソコン上のYahoo! JAPANのトップページに「利用者アンケート実施中」のテキストリンクを計6日間貼り(※)、アンケートページへ誘導する方法により、Yahoo! JAPAN利用実態や意見を収集する目的で実施した。
※テキストリンクの設置期間が例年より短縮されたため、有効回答数が減少しています。


また、インターネット選挙では、メディアの使い方をどう工夫するかも重要だと思います。

選挙でのインターネット活用については、オバマ大統領の選挙におけるメディア戦略が大きなヒントになると思います。オバマは、大統領選挙において、FacebookやTwitterといったソーシャルメディアをうまく活用し、集会への呼びかけやYouTubeなどの演説の映像を流すのと同時に、クレジットカードを使った大量の小口献金を募りました。

クレジットカードを使ってネットで献金を集める手法は誰にでも許可されていましたが、ソーシャルメディアとダイレクトメールで非富裕層を集客した上で、彼らからクレジットカードによる小口献金を集めたのはオバマだけでした。他の候補者は、ソーシャルメディアを使わないか、使ったとしても、単に人気取りのためだけであり、オバマ陣営のように資金調達を目的としたものではありませんでした。つまり、個別の戦術として使うのではなく、一貫した戦略の下に全ての戦術を連携して展開するところに意味があったのです。

さらに、大統領となった現在では、「Tweet your senator」というサイトを使って、Twitter利用者が自宅のZIPコード(郵便番号)を入力することによって、自分の地元の上院議員に改革への支持を訴えるメッセージを発信できる仕組みも公開しています。

オバマ大統領のメディア戦略に関しては、『ルポ米国発グログ革命』(池尾伸一著)という本にその経緯が詳しく説明されているので、以下にその内容を付記しておきます。

2004年、ノースカロライナ州の若者クリス・ヒューズが学生寮のルームメイト、マーク・ザッカーバーグとともにFacebookを立ち上げた。

本格的なビジネス展開を開始し、今では登録者数が日本のmixiの会員数の6倍を越える1億人以上に達し、会社の想定時価も150億ドルに達する。

だが、クリスはオバマ候補の大統領選挙キャンペーンを支援するために、いったんFacebookの経営から離れた。彼はFacebookの経験を基に、オバマの公式サイトを、支援者たちが参加でき、支援者同士のコミュニケーションを助けるSNSに作り替えた。その名も「my.BarackObama.com」。

支援者が自分の居住地域の郵便番号などを入力して登録すると、サイト内に自分のページが開設できる。近くで行われる支援イベントなど地域のボランティアの仕事が一覧でき、自分のページ内に資金集めキャンペーンページを立ち上げたり、友人知人にメールで協力を呼びかけたりすることができる。

こんなふうにして、オバマの公式サイトは「オバマの支援者のための支援サイト」の様相を呈した。

最も重要なのは献金窓口で、クレジットカード番号を入力することで、最低10ドルから献金できた。オバマのサイトは「マイボ(MYBO)」の愛称で若者たちに親しまれ、登録者数は2008年夏までに100万人近くに達した。

大統領選候補選びの資金集めレースが最も苛烈になっていた2008年2月、オバマは5500万ドルを集めた。オバマはこの8割にあたる4500万ドルをインターネットを通じたクレジットカードによる献金で集めた。また、オバマに献金した人々の94%は200ドル以下の「超少額寄付」だった。

結局、大統領選挙期間を通じて、オバマが主にネット経由で集めた資金は5億ドルで、「my.BarackObama.com」に協力者として登録した人は1300万人にのぼった。

オバマは大統領に就任してから、この支援者のネットワークを自分の政策を通すための強力なエンジンとして活用することにした。「my.BarackObama.com」は、政策推進のための「Organizing for America」へと衣替えした。

5月12日付の日本経済新聞に「ネット選挙、参院選で解禁 ツイッターは見送り 期間中のHP・ブログ更新、参院民主が了承」と題する関連記事が掲載されているので、追記しておきます。

民主党は12日午前の参院議員総会で、夏の参院選からのインターネットを利用した選挙運動の一部解禁を了承した。候補者本人と党本部による選挙期間中のホームページやブログの更新を認める。メール利用については「なりすまし」の防止策や法律違反時の罰則規定の策定に時間がかかるとして今回は見送る。自民党も参院選からのネット利用に積極的で、与野党は今国会での成立に向けた最終調整に入る。

国会議員の間でも急速に利用者が増えているミニブログ、ツイッターに関しても民主党内で慎重論が強く、解禁は時期尚早と判断した。

ネット選挙は2008年の米大統領選で、オバマ大統領とクリントン国務長官の激戦となった民主党予備選での活用が日本でも話題を集め、議員の間でも解禁論が高まっていた。民主党が10日までに実施した所属議員へのアンケートでも約160人が回答し、大半がホームページとブログ利用に賛成した。

参院は民主党や自民党など各党の代表者による協議会(座長・桜井充民主党参院政審会長)を開き、各党案を持ち寄って協議したうえ、全会一致での公職選挙法改正をめざす。

イケダハヤトさんというソーシャルメディアマーケターの方が「ソーシャルメディアと選挙、Facebookが模擬選挙を実施」と題するブログを5月6日付で書いていますので、追加して紹介させていただきます。

テーマ : 選挙
ジャンル : 政治・経済

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プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

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curiositykh@world.odn.ne.jp

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