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フリーミアムモデル

昨年最後にブログを書いてから、すっかりブログの更新が滞ってしまいました。

この時期に新年のあいさつもちょっとはばかられますが、ブログをご覧のみなさん、あけましておめでとうございます。

新年最初のブログからちょっと長文になりますが、最近興味を惹かれている話題について書いてみたいと思います。

昨年末、『ワイアード』誌の編集長で、世界的ベストセラー『ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略』でも知られているクリス・アンダーソン氏の最新の著書『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』という話題の本を読みました。

この本は、近年のネット上の無料のサービスに象徴される「フリー」の概念について、その歴史や心理学的側面など様々な側面を取り上げ、綿密に検証しています。

その中でも、著者が提示している「フリーミアム」という概念が注目されています。

この言葉は、「フリー」(無料)と「プレミアム」(有料)の2つを組み合わせたビジネスモデルを指す造語です。

同書の中で著者は、「フリー」を次の四つに大別しています。

一つ目は、フリーでない他のものを販売し、そこからフリーを補填する「直接的内部相互補助」。

二つ目は、第三者がスポンサーとしてお金を支払うけれど、多くの人々にはフリーとして提供される「三者間市場」。

三つ目は、フリーによって人を惹きつけ、有償のバージョン違いを用意する「フリーミアム」。

四つ目は、非貨幣市場(贈与経済や無償の労働など)。

本書は、昨年7月7日にハードカバー版が発売され、同月の9日に書籍やプレゼンテーション用資料を無料で共有できるサービス「Scribed」で電子版が無料で配布されました。

つまり、著者は著書のマーケティング自体にフリーミアムモデルを利用するというオシャレな演出も見せたのです。

このビジネスモデルは、ネット上に広がるフリーのサービスを最大限に活用したものであり、今の時代に非常に合ったモデルと言えます。ネット上でフリーを強みとしたセルフブランディングを行い、そこで得た知名度を利用して他の領域で収益を回収するというやり方は、全く広告費をかけずにネット媒体を利用したスマートなマーケティング手法です。今や、ネット上で世界中の誰もが閲覧することができるので、情報の広がりは計り知れないものがあります。

ネットの発達によって新聞記事や雑誌記事のオンライン情報に無料でアクセスできるようになったことで、ここ数年だけでも休刊になった刊行物は記憶に新しいところです。すぐに思いつくだけでも、朝日新聞出版が発行していた月刊雑誌『論座』が2008年10月号をもって休刊、講談社の『月刊現代』も2008年12月1日発売の2009年1月号を最後に休刊となりました。さらに、新潮社の『フォーサイト』も今年の3月20日発売の4月号をもって休刊となることが既に決まっています。

『フリー』から『フリーミアム』へ,PoliticoやZyngaも成功」と題するサイトには、前述のフリーミアムモデルがオンライン新聞に適応された例が説明されています。

フリーミアムモデルの成功事例としては,新興新聞“Politico”が当てはまりそうである。“Politico”のサイトでは全ての記事が無料で閲覧でき,Nielsen調査では毎月400万人近いユーザーがサイトを訪れている(別の調査では700万人というデータもある)。一方,無料サイトでは得られないコンテンツを含む有料の“Politico”紙は,おそらく約5万人が購読している(新聞紙売上から逆算)。ということは,無料ユーザー400万人の1%,多く見ても2%しか,年間購読料200ドルの新聞紙を読んでくれていないことになる。それでも,新聞紙の購読売上によって,同社は黒字化を達成するのだから,“Politico”のフリーミアムモデルは成功したといえる。

また、「個人が印税35%の電子書籍を出版できる時代―Amazon Kindleの衝撃」と題した記事では、電子書籍市場の目覚ましい拡大について書かれています。主なポイントを抽出します。

Amazonのクリスマス商戦において,電子書籍が通常書籍の売上を上回ったというニュースが出版関係者を驚かせた。Kindle自体の販売台数も100万台を突破し,またその上で閲覧できる電子書籍もすでに40万冊になろうとしている。

Kindle Booksでは製本原価や出版会社の販売管理費が不要となる。例えば書籍定価が1000円,初版3000部が完売,印税が10%,製本原価が40%,流通マージンが30%だった場合の売上分配をシミュレーションしてみよう。

■リアル書籍の場合の売上300万円分配
  ・小売・流通会社 90万円 (30%) 
  ・印刷・製本会社 120万円 (40%)
  ・出版会社 60万円 (20%)
  ・著者 30万円 (10%)

■電子書籍の場合の売上300万円分配 (リアル書籍と同額の1000円で販売した場合)
  ・Amazon 195万円 (65%)
  ・出版会社 75万円 (25%)
  ・著者 30万円 (10%)

■電子書籍で著者が直接販売する場合の売上300万円分配 (同上)
  ・Amazon  195万円 (65%)
  ・著者 105万円 (35%)

問題はこの電子書籍リーダー(およびタブレット)がどのくらい普及するかだが,モルガンスタンレー調査によると,累積台数で2010年には700万台,2013年に4900万台になると予想している。

Amazonはこの勢いに乗じ,日本を含む全世界100ヶ国でKindleを発売開始した。またGoogleはソニー(電子書籍リーダー)と組んで電子書籍普及に乗り出すことを発表し,さらにAppleのジョブスもいよいよ電子書籍に本腰を入れ始めている。

デジタル・コンテンツ配信は,コンテンツ著作者と販売ポータルに大いなるチャンスをもたらす反面,その中間に位置する事業者にとっては大変な脅威となる。音楽業界におけるレコード会社と同様,出版業や書籍流通業は新たな付加価値やビジネスモデルを構築する必要性に迫られるはずだ。

ちょっと引用が長くなりましたが、ウィキペディアの説明によると、Amazon.comは「本のためのiPod」をコンセプトに開発に3年を費やし、2007年11月にKindleが発売となった、と説明しています。

フリーミアムモデルという概念の普及や電子書籍市場の拡大は、ネットを利用する多くの人たちにとって、特に無名の素人にとって大きなチャンスをもたらしてくれるものだと思います。

が、無名の素人がブランド価値を獲得できるチャンスが増えたとはいえ、そのチャンスを活かすことができるだけの肝心の中身が備わっていなければ何事も成し得ないのであり、私は現実には状況はそれほど大きく変わるわけではないだろうと思います。

言わば、プロ野球選手になりたいと思っている素人全員にプロテストのチャンスが与えられたとしても、それに合格する実力がなければ、結果はついてきません。

実際、電子書籍市場の拡大という状況の中で、既に激烈なレッドオーシャンが生まれていると思います。

つい先日、Twitterで自分ブランドの確立を手助けすることを専門にしているコンサルタントの方が、昨年世界的に有名になったスーザン・ボイルさんの最大のブランドは、圧倒的な歌唱力であり、その声によって、彼女がオーディション番組で歌を歌い始めた瞬間に聴く人の心を瞬時にとらえることができたことが大きいということをおっしゃっていました。

何か光るもの、人々の心を掴むものがなければ、いくら電子書籍市場が拡大しているといっても、そう簡単にチャンスをものにできるわけではないと思います。もちろん。凡庸な私を含めて。

テーマ : 読んだ本の紹介
ジャンル : 本・雑誌

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プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

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curiositykh@world.odn.ne.jp

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