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『越境者的ニッポン』(森巣博)

私は森巣博というオーストラリア在住のアウトロー作家が好きです。妻はテッサ・モーリス・スズキというオーストラリア国立大学教授で、異色の夫婦です。

数年前、この作家の書いた『無境界家族』という本を初めて読んだのがきっかけで、ファンになりました。

その後、『無境界の人』、『神はダイスを遊ばない』、『ナショナリズムの克服』(姜尚中さんとの対談本)といった他の著書も読み、森巣節を堪能しました。

最新刊の『越境者的ニッポン』(講談社現代新書)でも、森巣節は健在です。序の『日本国民は無知になってしまったのだろうか?』の中で、次のような見事な言葉のセンスを披露しています。

チューサン階級(中学校三年生程度の知識の持ち主の意味)の素朴な疑問とは、以下のごときである。

八百屋のおっさんがやれば「犯罪」だが、公務員とか大企業の職員がやれば「不祥事」と呼ばれるのはなぜか?

永田町や霞が関の都合で浪費される金は「公的資金」だが、給料から差引かれるのは「税金」と呼ばれるのはなぜか?

どこから見ても「売春」だが、年端もいかぬ少女がやると「援助交際」と呼ばれるのはなぜか?

また、事件の容疑者の報道についても、次のような疑問を呈しています。

被害者や証言者は「32歳の男性」や「20歳の女性」と記載されているのに、容疑者や被告は「32歳の男」や「20歳の女」と書かれていることに気付かれることだろう。つまり容疑者や被告からは、なぜか「性」が抜け落とされている。

さらに、日本人論に関する疑問も非常に興味深いものです。森巣氏は、次のように記述しています。

たとえば三島由紀夫は、「もはや隊の柵外には真の日本はない」として、1970年11月25日に市ヶ谷の自衛隊に入って隊員たちに決起を呼びかけ、それが失敗すると自決した。

でも、満員通勤電車の中で、縦四つ折りにしたスポーツ紙のスケベ記事を読んでる疲れ果てたおっさんたちは、「真の日本」の中に含まれないのだろうか。年寄りを押しのけ確保した地下鉄の座席に坐ると、白いガーゼのハンカチで額に浮いた汗を拭うおばちゃんたちは、どうなんだ?

三島由紀夫の理解する「真の日本」からは、おそらく軽く99%を超す日本人が排除されてしまうことだろう。

森巣氏の表現は非常に荒削りで、露骨なものですが、着眼点には鋭いものがあります。長年にわたるオーストラリアでの暮らしを基にして、日本を観るその視点は、大部分の日本人にとって新鮮であり、自分たちがいかに国内の論理やメディアの報道に飼いならされているかに気付かされます。

テーマ : 本読みの記録
ジャンル : 本・雑誌

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プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

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