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統計翻訳と人間の創造性

今回は現代ビジネスに掲載された「進化する統計翻訳は“現代に蘇ったロゼッタストーン”だ」と題する記事に注目してみました。

スマートフォンとクラウドが普及した現在、様々な翻訳ツールが開発されており、その中の一つに世界23ヶ国、26の研究機関によって運営されている「ユニバーサル音声翻訳先端研究コンソーシアム(U-STAR)」が開発した音声翻訳アプリ「VoiceTra4U-M」があるそうです。

例えば、ある朝、5ヶ国の人間が同時にこのツールを利用して、「おはよう」と母国語で話しかけたとします。すると、スマートフォンに向かって話しかけた「おはよう」という挨拶は、中国人には「ニイハオ」、米国人には「Good morning」というように、参加しているメンバーの母国語に翻訳されて伝わっていく仕組みになっています。

これはパターンの蓄積によって翻訳精度を高めていく技法であり、「統計翻訳」と呼ばれているものです。

「コーパス」と呼ばれる、原文とその訳文の対を集めたデータベースを作ることで、ある原文が現れた時にコーパスから類似の対訳を訳文として返すことができるというのが、統計翻訳の基本的な仕組みです。

統計翻訳は、翻訳技術の中では比較的新しいもので、「コーパスの量が質を決める翻訳技術」とも呼ばれています。

Googleの提供する翻訳サービス「Google Translate」も統計翻訳が利用されている例になります。

記事の中には、2008年と2012年にGoogle Translateで翻訳を試みた以下のような結果が紹介されています。2008年時点ではほとんど日本語の文章として成り立っていなかったものが、年月を重ねることでビッグデータ化したコーパスにより、現時点ではかなり自然な翻訳結果が得られ、短い文章ではあれば十分実用性のあるレベルになっていることがわかります。

原文:I forgot to call her last night.
2008年:パスワードを忘れて彼女の最後の夜をコールします。
2012年:昨夜、私は彼女を呼ぶのを忘れていました。

原文:She bought a picture painted by a famous painter.
2008年:彼女は買って画像塗装された有名な画家です。
2012年:彼女は有名な画家によって描かれた絵を買いました。

原文:Dick played the piano and Lucy sang.
2008年:ディック演奏のピアノとルーシー相です。
2012年:ディックはピアノを弾き、ルーシーは歌った。


私がこの記事を読んで受けた印象は、コーパスというデータの蓄積によって翻訳精度を高めていく統計翻訳というのは、時を経る中で質が上がっていくものであり、バカにできないものがあるという感じです。

しかし、また統計翻訳は機械的に蓄積されたパターンに基づいて翻訳作業を行うという点では、あらかじめプログラムされたパターンに当てはまらないケースには上手く対応できないという弱点もあり、この点では精度が上がっても生身の人間の緻密な知性にはかなわないだろうと思います。

それこそは、人間の翻訳者が必要とされる所以です。

この記事を読んで数週間後に、ツイッターで興味深いツイートを目にしました。それは、大阪府立大学の森岡正博教授の次のようなツイートでした。

以前から思っているのだが、「創造性」をコンピュータによって自動生成することができるようになったら、ある意味人間の最良の部分がコンピュータによって取って代わられることになる。「創造的なもの」が安価に自動大量生産され、わざわざ人間のクリエーターがそれを生み出す必要がなくなる。悪夢か。


すると、このツイートに対して、心理学者の渡邊芳之氏が次のような返信をしていました。

心理学における「創造性研究」は創造性と「デタラメ」あるいは「ランダム」とが客観的に区別できないという難問でいつも立ち止まってしまいます。


私はこの一連のツイートを読んだ時に、人間の創造性とはいったい何なのだろうかという根源的な疑問が改めて湧いてきました。

テーマ : 在宅ワーク
ジャンル : 就職・お仕事

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プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

ブログを読んでいただいて、ご意見・ご感想などございましたら、お気軽に以下のアドレスまでメールをいただければと思います。

curiositykh@world.odn.ne.jp

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