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読みにくい翻訳書を読んで思ったこと

最近、あるドイツの歴史家の自伝の日本語版を読んで、強く思ったことがあるので、そのことについて書きたいと思い、ブログをアップしました。

この本は以前から持っていて、ずっと積読状態だったので、改めて読んでみたいと思い、手に取って読み始めてみたのですが、訳文が私にとってはあまりにも読みにくくて、途中で読むのが嫌になってしまいました。

この本を日本語に訳したのは、今はもう亡くなってしまったある高名な歴史学者です。ここでは、別にその人を非難したいといった気持ちがあるわけではないので、あえて名前は伏せておきますが、とにかくわかりにくい訳文です。原書は当然、ドイツ語で書かれたものです。私は豊富なドイツ語の知識を持っているわけではありませんが、翻訳という観点から考えられることがあるので、以下にそのポイントを挙げてみたいと思います。

本全体を通して、代名詞を訳す時、「彼は彼の~を…して」といった調子で、名詞の前に「彼の」という所有格を付けています。文脈の中でそれが自然であれば問題ありませんが、そのすぐ前の文で「彼の」と書いていて、さらにその後の文でも「彼の」と続けて書いてある箇所が多々あり、しつこくて、くどくて、読みにくいこと甚だしいです。

こういう場合、例えば、一つの方法として「彼の」を「自分の」や「自らの」、または「持っている」といったように、文脈に合わせて臨機応変に表現を変える工夫が必要だと感じます。

また、文章のあちこちに不自然に感じられる表現があり、これはおそらく、訳語の選択ミスが大きな要因だろうと推測します。外国語の勉強をやったことがある人であれば、経験上わかっていることだと思いますが、単語というのは辞書を引くと、大抵は複数の意味が列挙されていて、その中の一番最初の意味や二番目の訳し方が、その単語の訳語を代表するものになることが多いです。

翻訳する場合、そういう訳語の選択肢の中から文脈にふさわしいものを考えて選びますが、おそらくこの本を訳した歴史学者の方は、そういういくつかの考えられる選択肢の中から文脈に適さないものをかなり機械的に拾って当てはめたのではないかと思われます。

さらに、訳文自体が一回読んだだけではすんなりと理解できない、ややこしい文章の構造や表現技法を使っている箇所もあり、全体的に実に読みにくいという印象が強いです。

こういうわかりにくい翻訳文が並んだ本を読んで改めて実感したことがあります。それは、わかりにくい訳文というのが読む人にとって、どれだけ読書ペースと作業効率を下げ、機会損失を生むかということです。(ただ、私の場合には、これを通じて感じたことをこのブログに書く材料ができたという意味では、純粋な機会損失でもないという側面はありますが。)

こういう経験を通して、自分が訳した文章を依頼主がその人の目的に応じて読んだ時、どれだけ読みやすく、意図にふさわしい訳文に仕上がっているかということが、どれだけ大事かということを改めて実感させられました。

翻訳の結果出来上がった成果物は、それを手にする依頼主にとって単なる紙の上に書かれた文章という商品であるという部分に留まらず、それを利用した結果としてどれだけの経験価値を提供できるかということが、非常に重要だということです。
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テーマ : 読書感想
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

ブログを読んでいただいて、ご意見・ご感想などございましたら、お気軽に以下のアドレスまでメールをいただければと思います。

curiositykh@world.odn.ne.jp

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