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長いのと短いの、どっちが訳しやすい?

翻訳を形作っている要素には様々なものがありますが、そのうちの一つに文章の長短があります。

文章が短いからといって、必ずしも訳しやすいとは限りません。例えば、私がその一例としてすぐに思い浮かぶのが学術論文の要約文の翻訳です。学術論文の要約文は、長い論文の要点を短くまとめたものであり、そこには専門的なキーワードが凝縮されています。

そのようなキーワードは、ある特定の分野について研究している研究者でなければわからないものが少なくありません。例えば、私が以前英訳した教育に関する論文の要約文の中に、教育制度に関するある特別な用語が出てきました。

要約文の中には、要約文ですからその用語に関する説明は書かれていません。そこで、私はその用語について調べて、内容を理解した上で、その英訳語を調べるというプロセスを経る必要がありました。

このように短い文章だから訳しやすいとは限らない場合があります。それとは反対に、文章が長いと、その分だけ文脈の中での判断材料が増えてくるので、訳語を見つけやすくなるという側面もあると思います。
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テーマ : 徒然なるままに…
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村松増美氏の死

私も関根マイクさんと同じで、矢能千秋さんのツイートを見て、通訳者である村松増美さんの死について知りました。

私にとって村松さんは雲の上の存在というイメージであり、小松達也氏とともにサイマル・インターナショナルを創設した日本の通訳者の草分け的存在というイメージが強くあります。

私はサイマル・アカデミーで翻訳を学んだので、サイマルの校長を務めていた村松さんには間接的にではありますが、恩恵を受けた一人です。

以前、村松さんの著書も拝読したことがありますが、今手元にあるのは『ミスター同時通訳の「私も英語が話せなかった」』です。あともう一冊あるはずですが、残念なことに部屋のどこに置いたのかが思い出せず、取り出すことができません。またいつか思いがけない時に出てくることでしょう。

何やらとりとめもない話になってしまいましたが、謹んで村松さんのご冥福をお祈り致します。

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統計翻訳と人間の創造性

今回は現代ビジネスに掲載された「進化する統計翻訳は“現代に蘇ったロゼッタストーン”だ」と題する記事に注目してみました。

スマートフォンとクラウドが普及した現在、様々な翻訳ツールが開発されており、その中の一つに世界23ヶ国、26の研究機関によって運営されている「ユニバーサル音声翻訳先端研究コンソーシアム(U-STAR)」が開発した音声翻訳アプリ「VoiceTra4U-M」があるそうです。

例えば、ある朝、5ヶ国の人間が同時にこのツールを利用して、「おはよう」と母国語で話しかけたとします。すると、スマートフォンに向かって話しかけた「おはよう」という挨拶は、中国人には「ニイハオ」、米国人には「Good morning」というように、参加しているメンバーの母国語に翻訳されて伝わっていく仕組みになっています。

これはパターンの蓄積によって翻訳精度を高めていく技法であり、「統計翻訳」と呼ばれているものです。

「コーパス」と呼ばれる、原文とその訳文の対を集めたデータベースを作ることで、ある原文が現れた時にコーパスから類似の対訳を訳文として返すことができるというのが、統計翻訳の基本的な仕組みです。

統計翻訳は、翻訳技術の中では比較的新しいもので、「コーパスの量が質を決める翻訳技術」とも呼ばれています。

Googleの提供する翻訳サービス「Google Translate」も統計翻訳が利用されている例になります。

記事の中には、2008年と2012年にGoogle Translateで翻訳を試みた以下のような結果が紹介されています。2008年時点ではほとんど日本語の文章として成り立っていなかったものが、年月を重ねることでビッグデータ化したコーパスにより、現時点ではかなり自然な翻訳結果が得られ、短い文章ではあれば十分実用性のあるレベルになっていることがわかります。

原文:I forgot to call her last night.
2008年:パスワードを忘れて彼女の最後の夜をコールします。
2012年:昨夜、私は彼女を呼ぶのを忘れていました。

原文:She bought a picture painted by a famous painter.
2008年:彼女は買って画像塗装された有名な画家です。
2012年:彼女は有名な画家によって描かれた絵を買いました。

原文:Dick played the piano and Lucy sang.
2008年:ディック演奏のピアノとルーシー相です。
2012年:ディックはピアノを弾き、ルーシーは歌った。


私がこの記事を読んで受けた印象は、コーパスというデータの蓄積によって翻訳精度を高めていく統計翻訳というのは、時を経る中で質が上がっていくものであり、バカにできないものがあるという感じです。

しかし、また統計翻訳は機械的に蓄積されたパターンに基づいて翻訳作業を行うという点では、あらかじめプログラムされたパターンに当てはまらないケースには上手く対応できないという弱点もあり、この点では精度が上がっても生身の人間の緻密な知性にはかなわないだろうと思います。

それこそは、人間の翻訳者が必要とされる所以です。

この記事を読んで数週間後に、ツイッターで興味深いツイートを目にしました。それは、大阪府立大学の森岡正博教授の次のようなツイートでした。

以前から思っているのだが、「創造性」をコンピュータによって自動生成することができるようになったら、ある意味人間の最良の部分がコンピュータによって取って代わられることになる。「創造的なもの」が安価に自動大量生産され、わざわざ人間のクリエーターがそれを生み出す必要がなくなる。悪夢か。


すると、このツイートに対して、心理学者の渡邊芳之氏が次のような返信をしていました。

心理学における「創造性研究」は創造性と「デタラメ」あるいは「ランダム」とが客観的に区別できないという難問でいつも立ち止まってしまいます。


私はこの一連のツイートを読んだ時に、人間の創造性とはいったい何なのだろうかという根源的な疑問が改めて湧いてきました。

テーマ : 在宅ワーク
ジャンル : 就職・お仕事

フリーランス翻訳者雑感

今回は、フリーランス翻訳者としての私の経験に基づいたフリーランスについての雑感を綴ってみました。

私は、フリーランスと呼ばれている人たちは分野は違っても、常に自分のキャリアをどう向上させるかについて考えていると思います。ギャラのことや実務経験のこと、取引相手のことなど様々です。

その中でもフリーランスにとってギャラは絶対に外して考えることはできない重要な要素です。ギャラについて考える時、私は自分が翻訳の実務の世界に入ったばかりの初期の頃のことを思い出します。

その当時、翻訳関係の求人サイトで翻訳者募集の告知を見ました。そこには、金額は安いがそれでもよければ応募し次第、すぐに仕事を依頼すると書かれていました。

当時の私は実務の世界に入ったばかりの状態であり、金額よりもとにかく翻訳の実務経験を少しでも積みたいと考えていました。そこで、この募集に応募すると、告知に書かれている通り、すぐに仕事の依頼がきました。

内容は、ある観光関連の文書の和訳でした。分量は15ページから20ページくらいで、支払われた翻訳料金は25,000円くらいだったと記憶しています。

当時の私は自分がどのくらいの時間でどのくらいの分量をこなすことができるのかまだ経験が浅かったのでわかりませんでしたが、それを夜の遅い時間も使って訳したという記憶があります。

これが私にとっての初めての翻訳実務の仕事でした。もちろん、今の私だったらこういう条件の仕事は引き受けませんが、当時は実務経験を積みたいという意図を持って、仕事を引き受けました。

翻訳者の方々の中には同じような経験をされている人もおられるだろうと想像します。

また、現在の話になりますが、私がかかわっている仕事の中に、あるシンクタンクが毎月発行している論稿の英訳の仕事があります。

この案件は、毎月一本から二本の論稿を英訳するというもので、だいたい一本の論稿が1ページから2ページという短いものです。分量が少ないので、支払われる翻訳料金も決して高くはありませんが、私には私の考えがあって、このプロジェクトにかかわらせていただいています。

このように、フリーランス翻訳者は自分のキャリアをいろいろな角度から見て、常にいろいろなことを考えて動いているものだと思います。

このブログを読んで下さった読者の方々も、フリーランスについてどんなことを考えているのか気になります。

テーマ : ひとりごと
ジャンル : ライフ

文芸翻訳家マイケル・ヘンリー・ハイム教授の死

今回のブログでは、文芸翻訳家マイケル・ヘンリー・ハイム教授の死去を伝える『ニューヨーク・タイムズ』の記事に注目してみました。たいへん不勉強にも私はこの記事を読むまで同教授について知らなかったので、記事を読んで非常に興味を持ちました。

以下に、記事の主な内容をまとめておきます。

ギュンター・グラスやミラン・クンデラ、アントン・チェーホフといった中欧および東欧の作家の作品を英語圏の読者に紹介したことで知られている著名な文芸翻訳家であり、スラブ系諸言語およびスラブ文学の専門家でもあるマイケル・ヘンリー・ハイム氏が、今年9月29日(土)にロサンゼルスの自宅で亡くなった。享年69歳。ハイム氏が教授として40年間にわたって教鞭をとってきたカリフォルニア大学の発表によると、死因は黒色素細胞腫の合併症ということだった。

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ハイム氏が特に優れているのは、習得している言語の多さだ。10ヶ国語以上に精通している中で、8ヶ国語の翻訳を行っている。その言語には、スラブ系諸語(ロシア語、チェコ語、セルボクロアチア語)、ゲルマン系諸語(ドイツ語、オランダ語)、ロマンス語系諸語(フランス語、ルーマニア語)、ハンガリー語が含まれている。

ハイム氏の訳書で特に代表的なのはミラン・クンデラの『笑いと忘却の書』、『存在の耐えられない軽さ』である。

また、ハイム氏は1999年のノーベル文学賞受賞者であるギュンター・グラスの小説『私の一世紀』と回顧録『玉ねぎの皮をむきながら』を英訳したことでも知られている。この回顧録の中で、「ドイツの良心」と呼ばれていたグラス氏は、10代の頃ナチスの武装親衛隊に所属していたという秘密を明らかにし、本が出版される前に明らかにされたこの事実は文学界を驚愕させたのだった。

ハイム氏はさらに、トーマス・マンの『ヴェニスに死す』を含めた欧州の伝統的な作品の新しい英訳も手掛けており、この翻訳で2005年にHelen and Kurt Wolff Translator’s Prizeを受賞している。

また、ドイツ語翻訳ではベルトルト・ブレヒトの作品を手掛け、ロシア語ではチェーホフの『かもめ』や『桜の園』、『ワーニャ伯父さん』などを扱っている。

マイケル・ヘンリー・ハイム氏は1943年1月21日にマンハッタンで生まれ、テキサスとロサンゼルスで育てられた。4歳の時に父親をガンで亡くし、母とニューヨークに戻り、スタッテン島のカーティス高校を卒業した。

コロンビア大学で中国語、ロシア語、スペイン語を学び、学位を取得した。コロンビア大学では、著名な翻訳家であるグレゴリー・ラバッサ氏と行動を共にした。ラバッサ氏は1970年にガルシア・マルケスの『百年の孤独』の英訳を発表している。

続いてハイム氏はハーバード大学でスラブ言語学の修士号とスラブ諸言語の博士号を取得した。同氏はThe Letters of Anton Chekhov(1973年)で翻訳家として注目を集めた。同氏が手掛けた他の翻訳作品には、The Island of Crimea(ロシア語)、The Encyclopedia of the Dead(セルボクロアチア語)、Too Loud a Solitude(チェコ語)、Helping Verbs of the Heart(ハンガリー語)もあり、1976年にはContemporary Czechを著している。

テーマ : ことば
ジャンル : 学問・文化・芸術

プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

ブログを読んでいただいて、ご意見・ご感想などございましたら、お気軽に以下のアドレスまでメールをいただければと思います。

curiositykh@world.odn.ne.jp

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