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シノドスさんに寄稿させていただきました

今日、「集団的自衛権行使容認を海外メディア・専門家はどう見たか」というテーマで、専門知に裏打ちされたジャーナリズムを標榜するメディアであるシノドスさんに拙稿を寄稿させていただきました。

内容は、マイケル・グリーン氏とジェフリー・ホーナン氏の共著論考、米紙『ワシントン・ポスト』の報道、中国共産党中央委員会の機関紙『人民日報』傘下の英字新聞『グローバル・タイムズ』の報道、ドイツの国際放送局「ドイチェ・ヴェレ」の報道、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のオーレリア・ジョージ・マルガン教授(日本政治学)の論考、ロシア戦略研究所アジア中東研究センターのウラジミール・テレコフ主任研究員の論考についてまとめました。

海外メディアの報道や海外の専門家の分析が、集団的自衛権に関する冷静な議論を行うための材料となれば幸いです。
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カイロスが凝縮された2011年

今年最後のブログです。2011年も早いもので、もうあと数日で終わりです。

歴史に対するものの考え方として、「クロノス」と「カイロス」という2つのアプローチの仕方があるという話を本で読んだことがあります。クロノスとは、起こったことを時系列に沿って時間を遡っていく考え方であり、カイロスとは、例えば、1945年8月15日の日本にとっての敗戦のように、歴史上の流れの大きな分かれ目となる出来事や物語に焦点を当てる考え方です。

2011年という年は、1年の間にこのカイロスが凝縮された年だったと思います。

年が明けて間もなく、1月にチュニジアで起こった政変がきっかけとなって、民主化運動がエジプト、リビア、バーレーンへと飛び火し、約30年にわたってエジプトの長期政権を築いてきたムバラク大統領の辞任、40年以上にわたってリビアに君臨してきたカダフィ体制崩壊にまで至りました。10月にはカダフィ死亡のニュースが世界中に配信され、今世紀の代表的な独裁者の1人がついに最期を迎えました。

また、5月には、米国のオバマ大統領が海軍特殊部隊がオサマ・ビンラディン容疑者を殺害したという発表を行い、9.11テロからちょうど10年目を迎えた今年、1つの区切りとなる状況を迎えました。また、今月に入って約9年間にわたって続けられていたイラク戦争の終結宣言も行われました。

さらに、今月19日には北朝鮮の金正日総書記死去の知らせも世界中を駆け巡り、来年の金日成生誕100周年を前にして、後継者問題が劇的な局面を迎えています。

これらの出来事どれをとってみても、世界の歴史の中で大きな節目となる出来事として、永久に残るものだと思います。

ところが、日本および日本人にとっては、3月11日に起こった東日本大震災と津波による原発問題という、とんでもなく大きな問題に見舞われる事態になり、年末まで1日としてこの問題が話題にならない日はないくらいの年になりました。

今年の年明けの時点で、いったい日本がこんな事態に見舞われると誰が予想できたでしょうか。震災前と震災後という時代の大きな分かれ目ができ、「フクシマ」という地名が、スリーマイルやチェルノブイリといった世界史上に永遠に残る大きな原発事故の発生現場となるなんて、信じられないような現実が生まれる年になってしまいました。

今年を振り返ってみると、3月11日からあっという間に時間が過ぎているという感じで、実際にはその間の時間を1日1日過ごしてきたにもかかわらず、まるでその間が空白になっているような錯覚を覚えます。あの日から月日が駆け足で過ぎて行ったような感じです。毎日ツイッターのタイムラインに原発の話題が上らない日はなく、そのタイムラインの流れと共に月日も刹那的に流れて行ったような、そんな印象すらあります。

この3.11という経験をした日本人にとっては、米国人がケネディ大統領暗殺や9.11テロの日にどこで何をしていたかということがいつまでも語り継がれているように、いつまでも忘れられない経験として記憶に残っていくことでしょう。

私はあの大きな地震が起こった当日は、前日にたまたまアマゾンに注文した商品が届き、それを受け取るために2階から階段を下りて1階の玄関口まで行き、そこから2階に戻ってきた、まさにその瞬間の出来事でした。

部屋に入ろうとした瞬間に、揺れを感じ、何なのだろうかと思った次の瞬間、ドスンというような激しい揺れに襲われ、大きな地震だと気づきました。それと同時に、家の電気が消え、停電が始まりました。ブレーカーを調節しても電気のもと自体が機能していない状態だとわかり、すぐにiPhoneでツイッターにアクセスしてみました。

すると、東北沖を震源とする大きな地震が発生したことがわかってきました。タイムラインを見ながらも、いつになったら電気は復旧するのだろうか、このまま続けばいずれiPhoneの充電も切れ、タイムラインを追うこともできなくなると思い、事態を見守るという時間が続きました。

しばらくすると、市のアナウンスが流され、東京電力が電気の復旧に努めているが、いつ回復するかは目処が立たないという内容が伝えられました。結局、そのまま夜を迎え、翌日の明け方4時少し前くらいまで停電が続き、約13時間暗闇で過ごすという経験をすることになりました。

それまでの人生の中で、地震で長時間にわたって停電になるという経験自体したことがなく、13時間も電気の復旧まで待つということも初めてでした。もちろん、東北の被災者の方々の苦しみからすれば比べ物にならないレベルですが、こんなことが起こってしまうんだなあと思い知らされる経験でした。

昨日、内閣府の有識者検討会が東海、東南海、南海地震を起こす「南海トラフ」で発生する最大級の巨大地震の想定震源域を従来よりも2倍に広げたという内容の中間報告が発表されましたが、3月の大地震がどんな地殻変動を生み、それがこれからどんな動きをする可能性があるのかというのは、本当に長期的な問題だと思います。もちろん、原発の影響が長期的にどうなるのかということが大きな問題であることも言うまでもないことです。

地震による地殻変動も原発問題も日本にとどまらず、これからも世界的に影響を及ぼす可能性が長期的に続く問題だけに、2011年という年は世界的な分水嶺になる年だったと実感するこの年末です。

テーマ : 東日本大震災
ジャンル : ニュース

森本敏さんの講演

先月10月22日に私の地元の近くの会場で、拓殖大学海外事情研究所所長森本敏さん講演会が開かれたので、話を聴いてきました。

講演時間が約1時間とかなり短く、実際には最後の1問だけの質疑応答を含めて20分くらい規定時間を過ぎていましたが、その内容を簡単に以下にまとめておきます。複数の話題を短い時間で概略的に説明していたので、箇条書きっぽくまとめてあります。(もしかすると、書きミスの箇所もあるかもしれません。)

●震災と原発

人災の側面が強い。
政府の震災関連予算23兆円プラスαで、最初の5年間で19兆円、その後5兆円くらいの規模になる。
震災復興財源確保法に基づく政府による補償で、15年から20年くらいのスパンで国債償還になるだろう。政府は2015年をめどに消費税率10%への引き上げを検討。

原発問題

・現在の状況を収束させること

・電力問題

原発54基を7基から8基に減らした場合、化石燃料を海外から輸入しなければならなくなり、国内の産業空洞化を招き、地方経済が大きなダメージを受ける。

・エネルギー政策

エネルギー基本計画では、2009年を基準値にして2030年までに原発を最低でも14基増設し、エネルギーの海外依存度を減らす計画を立てていた。ここには、鳩山前首相が国連演説で述べた2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減するという公約の実現が含まれている。

現実の世界で、即原発をやめることはできない。

・賠償問題

東京電力に責任がある。ただ、電気事業法に基づいて国が東電の電気事業を許可した事実もあるため、東電だけに全ての責任を帰するのも無理がある。そういう事情を考慮した上で、法治国家として冷静に対処すべき。

・周辺諸国との関係

放射性物質の海洋への放出を含めて発生させた責任を問われ、国として賠償を求められることになるだろう。

・原発の安全管理

テロのリスクを改めて考える必要がある。原発がテロリストに狙われるような事態が発生した場合、自衛隊の防衛出動治安出動には国会の承認が必要。原発を直接テロから守ることができる体制が整っていない。

・アジア周辺国の原発管理

もしアジアの他国が今回の日本のような原発問題に見舞われたとしたら、海外からの原発処理支援を受け入れないだろう。国家の機密に関わることだから。

●野田政権の課題

・震災と原発への対応

・日米同盟の再構築(鳩山・菅政権で関係悪化)

・普天間基地問題

・TPP

日本のコメが中国の富裕層に好まれているという現実がある。これを言うと、なんとバカなことを言うのかと言われるだろうが、TPP賛成。TPPで日本の農業や産業の競争力を伸ばしてほしい。

・米国産牛肉輸入規制の緩和問題

ハーグ条約加盟の是非(「国際的な子の奪取についての民事面に関する条約」)

森本さんの周囲の女子学生の多くが、外国人と結婚したいと言っているという話。その理由は、ハーフの子供はカッコイイから。外国人ならどこの国でもこだわらないという女子学生が多いそうです。

武器輸出三原則の緩和

米国は将来、日本と武器の共同開発を行いたい意向。

●2012年は世界的な指導者交代の年:米国大統領選挙、ロシア大統領選挙、中国の新体制、北朝鮮の後継者問題

・米国:冷徹な管理者で決定的なミスをしない現職のオバマが再選されるか。

・ロシア:プーチンが国家戦略を策定し、メドベージェフが実際に動く双頭体制
ロシアは天然ガスを売って外貨を稼ぐ。

・中国:習近平国家主席、李克強首相誕生

日本にとっては、日米同盟は最終目標ではなく、中国との外交戦略が要。

・北朝鮮:金日成主席生誕100周年

●周辺諸国との領土問題

・北方領土

歯舞、色丹の2島返還に反対。両島の住民の割合は4島全体の7%にすぎない。
日ソ共同宣言では、平和条約締結後、日本に返還に同意)

・竹島問題

この問題の厄介なところは、敗戦後の日本が外交権と防衛権を失っている状態の時に(サンフランシスコ平和条約で回復)、GHQのマッカーサーの統治の下で漁業圏が決められ、竹島が韓国側の領域に入れられていたという点。

韓国の高官と一緒に食事をした時、その人の娘が竹島は韓国のものだということを歌詞にした歌を歌っているという話をされることがあるそうです。そういう時には、そんなしょうもない歌を歌わせるなと言ったそうです。どんなに交流があって、何度も会っている人物でも、領土問題が話題になった時には明らかに立場が違うという話。

・尖閣諸島

尖閣諸島は日本固有の領土であり、日中間に領土問題は存在しない。中国が島に民間人を送り込み、その病人を助けるために医療職員を派遣するというようなことを企てて、実効支配の口実をつくる隙を与えないように、日本が専門職員を常駐させるなりして、実効支配を明確にすることが大事。

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

9.11から10年目に思うこと

歳月が過ぎるのは本当にはやいもので、明日で9.11テロから10年になります。世界貿易センタービルに旅客機が激突するあの壮絶な光景は、今思い出してみても、全く信じられないものです。

あの年は、私にとっては、語学学校の翻訳者養成コースに通い始める前年に当たる年で、それに向けて新たに活動を始めたタイミングでした。そんな時に、あの空前絶後のテロが発生し、連日マスコミで大々的に報道されていたことを思い出します。

昨夜、俳優の渡辺謙さんがブッシュ政権下の米国政府で元運輸長官を務めたノーマン・ミネタ氏現ヒル&ノールトン社副会長)に会い、9.11テロを経験した日系人について話し合うというNHKのドキュメンタリー番組の再放送を見ましたが、その番組を見ている時に、9.11について改めて思い出したことがあるので、ブログに書いておきたいと思いました。

その思い出したことというのは、某SNSで知り合ったある女性から聞いた話です。

数年前のことになりますが、私はそのSNSを通じて、ニューヨークに15年住んでいたことがあるという既婚女性(以下ではAさん)を知りました。このAさんは、偶然私の住んでいる地域からそう遠くない地域に住んでいる人で、もし迷惑でなければ一度お会いさせていただきたいという連絡をすると、是非自宅に来て下さいということで申し出を快く許諾していただき、そのお宅に伺いさせていただいたことがあります。

Aさんは、昔から英語が大好きで、特に英語圏の文化に興味があり、将来は日本を出て絶対に海外に住み、海外で仕事をしたいという強い願望を持っていたそうです。実際に、その願望の通りに日本を離れてニューヨークに留学し、「地下鉄で通えるハーバード」の異名で知られるニューヨーク市立大学(日本人の霍見芳浩教授が有名)でマーケティングを勉強しました。ちなみに、Aさんは霍見教授の研究グループに所属していたそうです。大学卒業後もニューヨークで仕事をし、現地でメキシコ人の男性と結婚したことがあると言っていました。その人とは離婚し、今の旦那さんは日本人の方です。

ここまでが前置きです。

私はAさんから、9.11にまつわる以下のような体験談を聞きました。

Aさんは長い間ニューヨークで暮らしていましたが、ある時にその先の人生設計を考えて、日本に帰国しようと決めたそうです。日本に帰って住むための準備をするために、一時的に、10年以上帰っていなかった日本に短期間滞在し、不動産探しや生活の準備をしました。それが終わって、ニューヨークに戻り、現地の住居の引っ越し手続きや諸々の作業を終えたのが、9.11テロからほんの数日前だったそうです。

そして、日本に帰国し住み始めたばかりのある日、Aさんのもとに友達から電話がかかってきました。その電話で、友達が慌てた声ですごいことになってしまったねと言ったのですが、Aさんはテレビをあまり好きではなく、普段ほとんどテレビを見ない人なので、何のことなのかわからなかったそうです。

そこで、友達がテレビをつけてみるように言ったので、Aさんがテレビのスイッチを入れると、そこには驚愕の光景が映し出されていました。

Aさんはそのショッキングな映像を目にした時、ぞっとしたそうです。というのも、Aさんは帰国する直前のニューヨークで、普段のニューヨークとは何かが違う、何とも言いようのない異様な雰囲気を感じていたからです。

Aさんが日本に帰国しようとニューヨークを去る時に、町の雰囲気や空港の警備の様子に違和感があり、いつもとは明らかに何かが違うという不吉なものを感じていたそうです。

そういう経緯があったため、Aさんはテレビの画面に映し出された世界貿易センタービルの映像を見た時、あの違和感はこの前兆だったんだと感じたそうです。

(Aさんはいったん日本で暮らし始めましたが、再び日本を離れてハワイに2年間住み、そこで今の旦那さんと出会い、再び日本に住むようになったそうです。)

テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

北アフリカ・中東情勢と石油市場

今回は、1月のチュニジアでの政変をきっかけとして、エジプト、リビア、バーレーンへと広がっていった一連の民主化運動について書いてみました。

エジプトのムバラクやリビアのカダフィといったら、アフリカで長期間にわたって独裁体制を築き、君臨してきた人物であり、その体制が崩れたり、揺らいだりする事態が今年になって起こるというのは、本当に驚きです。

きっかけは失業中のチュニジアの若者が街頭で野菜や果物を売っていたところを警察に止められ、荷車を没収され、さらに暴力を振るわれたことに対して、焼身自殺を図ったことでした。

これに対する国民的な不満や怒りが燃え上がり、デモや暴動へと発展し、ベンアリ政権崩壊にまで至りました。この動きがエジプトの人たちのムバラク体制に対する不満にも火を付け、エジプトでも大規模な民主化要求デモが起こり、ムバラク大統領の辞任という結果に至りました。

さらには、それがリビアや中東のバーレーンにも飛び火し、リビアでは今でも反政府勢力とガダフィの大規模な武力衝突が続いている状況です。

リビアのカダフィと言えば、反米の権化とも言うべき人物であり、リビアを40年以上にわたって統治してきた独裁者の代表のような存在だと思います。

そのリビアにまで反政府運動が広がるというのは、ジャスミン革命の影響力は凄まじいものがあると感じずにはいられません。特に、今はインターネットが高度に発達し、世界中でリアルタイムの情報発信ができる時代なので、そこで得られた情報が他国の人たちの感情を突き動かすスピードは、格段に上がっているのでしょう。

私は今回の一連の動きを見ていると、マルクスの歴史観を思い出します。つまり、マルクスは、歴史を動かしていく大きな流れは、最初は人間の力によって生み出されるけれども、いったん流れができると、それは巨大なうねりとなって、いつの間にか人間の力では簡単には止められないものになる、と言っていたと本で読んだことがあります。

今回のブログを書くにあたり、北アフリカと中東の情勢が石油市場に及ぼす影響について、関連記事を調べてみました。

まずは、英国王立国際問題研究所の上級研究員、ポール・スティーブンス氏の記事の内容を以下にまとめてみました。

チュニジアで抗議デモが始まって以来、1月4日の1バレル94.90ドルから2月下旬には過去2年半の最高値である1バレル120ドルにまで原油価格(ブレント原油)が上昇した。

石油の供給自体に今のところ影響が出ていないのにもかかわらず、このような価格の高騰が見られた。スエズ運河と紅海・地中海を結ぶSUMEDパイプラインの石油輸送を巡って懸念があったが、このルートが分断されることはなく、実質的な輸送量自体も少ない。

ここでポイントになるのは、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)とロンドンのインターコンチネンタル取引所(ICE)の動向である。アラブ世界は全て同じであると考えている原油先物ディーラーたちは、チュニジアとエジプトで今日起こったことが、明日ペルシア湾の産油国にも大きな影響を与えると考えている。この見方は、バーレーン情勢によってさらに強くなったが、バーレーンは国家的な分裂が起こりにくい他の湾岸協力会議加盟国とは違うのである。

しかし、原油市場ではなく石油供給において、北アフリカおよび中東地域は世界の石油市場に極めて重要な役割を果たしている。この地域は世界の石油埋蔵量の61パーセントを占め、国際的に取引される原油の40パーセントを輸出している。リビア(日量144万バレル輸出)とイエメン(日量12万5000バレル輸出)の石油輸送が途絶した場合、世界市場に影響が出る。既に、世界の多くの石油企業がリビアでの石油生産をストップさせている。

また、イランで騒乱が起こる兆候もある。アフマディネジャド体制に対する不満から反乱が起きる可能性があり、既に石油企業の労働者のストライキが起こっている。

さらに、欧州は北アフリカのガス供給に大きく依存している。EU15はガス消費の16パーセントを中東および北アフリカからの輸入に頼っており、そのうちスペインは55パーセント、イタリアは43パーセントである。

国際エネルギー機関(IEA)は在庫の搬出の可能性を示唆しているが、これまでの歴史的な経緯から、市場の混乱を抑えるよりも、むしろ不安定な価格変動を助長する可能性の方が高いと言える。

短期的な石油供給と価格への影響は、「アラブの春」の結果と、原油先物取引市場がその結果にどう反応するかにかかっているが、同地域の新たな石油供給への投資に関しては、長期的に見て深刻な疑念が生じる。もし、将来石油需要が満たされる可能性があるとしたら、中東および北アフリカの石油埋蔵量を増やすために莫大な投資が必要になる。この大部分は世界の石油企業が担う必要があるが、政治的な不確定性をかかえた状況の中では、そうした投資は難しいだろう。つまり、価格に重大な影響を及ぼす石油供給の危機が差し迫っているのだ。


石油問題に関して、元外務省国際情報局主任分析官である佐藤優氏は、「【リビア緊迫】漁夫の利狙う産油大国ロシア」と題する記事の中で、興味深いことを書いています。

ロシアは情勢を極めて冷静に見ながら、自国に有利な状況をつくろうと戦略的に動いている様子がうかがえます。記事の中から、以下のポイントを抽出してみました。

ロシアは中東情勢の混乱に付け込んで、国益の極大化を図っている。チュニジアとエジプトの騒乱までは、ロシアも基本的に欧米と歩調を合わせていた。しかし、騒乱がリビア、バーレーン、イエメンに拡大すると顕著に独自路線をとるようになった。

ロシアは現在、中東諸国で生じている事態について民主的改革ではなく騒乱に過ぎないという基本認識を示した上で、事態を傍観するという国家意思を示しているのだ。

中東の騒乱にはロシアにとってプラスとマイナスの両面がある。マイナス面はイスラム原理主義過激派が伸長し、その影響がチェチェンをはじめとする北カフカス地域に及ぶことだ。プラス面はリビア、バーレーンなどの産油国の情勢が不安定になり、原油価格が上昇することだ。

チュニジア、エジプトの騒乱までは、ロシアにとってプラスよりもマイナスの方が大きかった。それだからロシアも欧米と協調姿勢をとった。しかし、リビア、バーレーンなどの産油国、さらに大産油国サウジと国境を接するイエメンに騒乱が拡大するに至り、原油価格の大幅な上昇が期待されるようになったので、プラスがマイナスを凌駕した。ロシアは本音では、現状はロシアの国益を増進すると考え、傍観する姿勢に転じたと筆者は見ている。

中東情勢は北方領土交渉にも影響を与える。ロシアの国章が双頭の鷲であることに象徴されるが、ロシアは東と西を同時ににらみながら国策を練る。中東情勢の不安定化により原油価格が上昇すると、日本は化石燃料大国であるロシアに依存することになると予測しているのであろう。それだから北方領土交渉で強気になっているのだ。

ロシアは、中東の混乱を自国の利益のために最大限に利用しようとする帝国主義政策をとっている。日本が「油乞い外交」でロシア帝国主義のわなにからめられないようにする国家戦略を早急に構築する必要がある。


また、このブログサイトに紹介されているカダフィと北朝鮮の関係に関する佐藤優氏の情報も興味深いものです。

佐藤氏によれば、北朝鮮の主要輸出品の一つはいまやトンネル掘りであり、シリアやレバノン、少し前はリビアなども顧客だったという。トンネルというのは避難壕や地下施設なども含むもので、カダフィは家族を北朝鮮製のトンネルにかくまっていた。

カダフィ自身も北朝鮮製のトンネルを有事のために備え反米を叫んでいたが、ブッシュ政権の後半で国際原子力機関(IAEA)による核査察を受け入れ、突然アメリカの軍門に屈服した。それには次のような経緯があった。

ブッシュ政権の後半に、イギリスがアメリカの仲介としてカダフィに接近した。そのときにカダフィがかくまっていた家族の居場所や顔写真なども全て暴き出した。そしてIAEAの核査察を受け入れ、核を作ろうとしていたことを公に謝罪すれば、今までのことは全て水に流すと交渉した。


佐藤氏は著書の中で、世界で諜報や謀略に最も長けているのが英国だと言っていますが、このカダフィ懐柔にも英国のしたたかさやうまさが出ていると思います。

今回のチュニジア、エジプトの政権崩壊に端を発した一連の動きは、歴史的に大きなものであることは間違いないと思います。約30年にわたってエジプトの長期政権を築いてきたムバラクの辞任、40年以上にわたってリビアに君臨してきたカダフィ体制に対する大規模な反政府抗議運動という出来事からは、時間の重みを感じます。

ただ、私は、このようなアフリカの国々よりも少なくとも発達していて、経済成長も経験してきた日本で、2009年まで50年以上にわたって自民党政権が続いていたという事実の方が、なんとも皮肉に感じられます。あの選挙は革命に匹敵する出来事だったのか。

テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

プロフィール

平井和也

Author:平井和也
KH翻訳事務所代表。主に人文科学・社会科学分野の日英・英日翻訳を中心にしており、行政翻訳専攻です。好奇心旺盛な本好きです。異文化間コミュニケーション・サポーター。日本翻訳者協会(JAT)会員。海外ニュースライター。

特に政治、経済、国際情勢、行政、ジャーナリズムといった時事的なテーマが得意です。

主な翻訳実績として、東大や一橋大学などの教授の書いた学術文書の英訳、2006年サッカーW杯ドイツ大会の翻訳プロジェクトや防衛省・法務省などの政府系文書、政府高官のパーティースピーチ文書、国際会議関連文書、シンクタンクの報告書・論考、英字新聞『ジャパン・タイムズ』寄稿記事の和訳などの翻訳経験があります。

趣味:読書、語学。

ブログを読んでいただいて、ご意見・ご感想などございましたら、お気軽に以下のアドレスまでメールをいただければと思います。

curiositykh@world.odn.ne.jp

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